山本健吉『いのちとかたち:日本美の源を探る』

20170505 山本健吉『いのちとかたち:日本美の源を探る』(新潮社 1981)読了。購入が「2004年10月16日」というメモ書きがあるから、12年半にして読んだことになる。山本については『古典と現代文学』を学生時代に、『大和山河抄』をその後に読み、『釈迢空』…

林勉ゼミ「古代研究」の思い出

20170505 今日、山本健吉の『釈迢空』(角川選書 1972)を読んでいたら、万葉集に載る千葉県市川の真間の手児奈伝説の歌が出てきて、懐かしくも思い出したことがある。46年前のことである。19歳、大学2年生の時、教養ゼミで、契沖研究が専門である林勉先生の…

鈴木義男と憲法誕生と吉野作造と

5/2日、ETV特集「義男(ギダン)さんと憲法誕生」は、見応えのあるものだった。この番組は、3年前に放送されたNHKスペシャル「憲法70年 “平和国家”はこうして生まれた」に繋がる番組で、福島県出身の鈴木義男(よしお)(1894-1963) に焦点を当てている…

石原吉郎の絶筆と伝道の書:『群像』9月号特集「戦後文学を読む」に触れて

20110817石原吉郎の絶筆と伝道の書:『群像』9月号特集「戦後文学を読む」に触れて 「戦後文学」という言葉がある。太平洋戦争の後のある一定の時期、戦後性を体現した傾向の強い文学を言うが、荒正人や埴谷雄高らの『近代文学』が推力となり、それを取り巻…

石原吉郎の死

20140214 私はこの1月に62歳を迎えた。かつては、とても想像し得ない年齢である。そして、私がその「沈黙の表現」により、生を生き延びることができた詩人・石原吉郎が1977年に62歳で(あたかも意図的な自死のように)亡くなったことを想うと、今の生きてい…

西川俊作・松崎欣一『福澤諭吉論の百年」

20151208 西川俊作・松崎欣一『福澤諭吉論の百年」(慶応義塾大学出版会、1999)読了。『慶應義塾学報』を前身とする『三田評論』創刊百年を記念して、同誌に掲載された福澤に関する論考・エッセイ・座談会18編を編んだもの。メディアがメディアであるだけに福…

平川祐弘『進歩がまだ希望であった頃:フランクリンと福沢諭吉』

20140305 平川祐弘『進歩がまだ希望であった頃:フランクリンと福沢諭吉』(講談社学術文庫、1990)読了。本書は『フランクリン自伝』と『福翁自伝』の二つの自伝を読み込み比較し、国籍と時代とを異にした強烈な二人の個性の間の沢山の共通項を拾い出した、…

「無名」ということ:本のあとがきの謝辞について

20150131 本のあとがきには、著者による謝辞がある場合があり、そして多くの場合、末尾近くに出版社と担当編集者への謝辞がある(ない場合もある)。書物という製造物の品質を保証するためにも、いい慣行である。私もかつては、その書物製造物の品質に最大限の…

林子平『海国兵談』自費出版

2014年4月28日 『季刊創文』No.13(2014春)の村上哲見「江戸時代出版雑話」が面白い。日本の書籍出版は、仏典から始まり、漢籍の翻刻、かな文字の古典に及んだことを示し、そしてこれら「物の本」を「本」というのであって、通俗読み物や絵本などは「本」では…

黒岩比佐子『パンとペン』

2013年4月28日 大逆事件百年の2010年の10月に上梓された黒岩比佐子『パンとペン』を読んだ。日本の先駆的な非戦論者・社会主義者である堺利彦の活動、特に社会主義「冬の時代」と言われた1910年代堺が拠った売文社での活動を描いた佳作である。本書の特徴の…

古語大鑑

2011年4月28日 最終の校正が出た古語辞典(全四巻のうちの第一巻)のゲラに初めて眼を通す。やはり画期的な日本語辞典だと納得。日本語への見方を変えるものだ。4月11日に亡くなられた築島裕先生が「理想の国語辞典」を求めて編集代表として十数年を費やしただ…

石井和夫:陸軍幼年学校と非戦の歌

20140612 石井和夫:陸軍幼年学校と非戦の歌 石井和夫氏から5月2日付で送られた書信について、ずーと考えている。氏によれば、この4月に、卒業70周年の同期生会があったという。何の同期生会かというと、今はとうになき「仙台陸軍幼年学校」。石井は1941年(…

石井立:昭和文壇支えた編集者魂

20140427 石井立:昭和文壇支えた編集者魂 4月初めに石井和夫氏(東大出版会名誉顧問)にお会いした際、「3月に兄・ 立の50回忌の法要をしました。弔い上げです。兄の50回忌を行うまで生きていると思いませんでした。」とお聞きした。和夫氏は1927年生れ。そ…

『丸山眞男手帖』68(2014.1)、高木博義「「昭和天皇をめぐるきれぎれの回想」断想」を読んで

20140116 『丸山眞男手帖』68(2014.1)、高木博義「「昭和天皇をめぐるきれぎれの回想」断想」を読んで 『丸山眞男手帖』68(2014.1)に掲載された高木博義「「昭和天皇をめぐるきれぎれの回想」断想」を読んだ。丸山眞男「昭和天皇をめぐるきれぎれの回想…

朝鮮活字文化の誕生:韓国清州古印刷博物館姉妹記念

20140426 ただいま印刷博物館。「韓国清州古印刷博物館姉妹提携10周年記念 朝鮮金属活字文化の誕生展」を見学。担当者の話しを聞きたいと思い、名刺を係員に渡したら、挨拶に来られたのが何と樺山紘一館長。恐縮です。樺山館長に、清州古印刷博物館を訪ねた…

札幌の著者に宛てた手紙2020/04/25

**先生 おはようございます。 コロナ禍により、今月は札幌に行けませんでした(札幌だけでなく、どこにも行けないでいますが)。コロナ禍により、全ての領域にさまざまな影響を与えていますね。 わたしの仕事の関連で言えば、出版社が在宅勤務・時短・交代…

本居宣長と出版業

【本居宣長と出版業】20160116私自身が、本居宣長に関心を寄せたのは、10代に遡る。大学生時代、「日本とは何か」という疑問を解き明かしたいと考え、2年生と3年生時の教養ゼミ「古代研究」で記紀万葉集を読み、さらに3年生と4年生時の専門ゼミ「政治思…

本居宣長と小津安二郎:石坂昌三『小津安二郎と茅ヶ崎館』

20110516時点で、以下のように、本居宣長と小津安二郎とを縁戚関係にあると書いたが、その後、縁戚関係にはないという説が有力であることを知った。 本居宣長と小津安二郎:石坂昌三『小津安二郎と茅ヶ崎館』 小津安二郎と本居宣長とがその経歴において松阪…

吉本隆明『高村光太郎』; 鶴見俊輔

20170425 吉本隆明『高村光太郎 増補決定版』(春秋社、1970年8月15日第1刷、1971年2月20日第2刷) を再読した。私がこの本を最初に読んだのは1970年代前半である。すでに吉本隆明の本を何冊か読んでいて、吉本の表現の核となる重要な著作は『高村光太郎』…

高見順『昭和文学盛衰史』

高見順(1907-65) の『昭和文学盛衰史』(文春文庫、1987)読了。この本は長年積ん読になっていた。1958年の単行本(文藝春秋新社)では上下2冊。文庫版で616頁。なかなか手が出なかったが、わたしの遠縁の編集者・作家である佐左木俊郎(1900-33) も登場し…

水戸光圀と出版事業

20170115 水戸光圀と出版事業 316年前の今日、1701年1月14日(元禄13年12月6日)、徳川光圀が亡くなりました(1628生れ)。水戸藩の2代目藩主。レンカノフk将軍、水戸黄門です。水戸光圀とも言います。光圀は、江戸時代の藩主として、最大の出版事業者です。印…

日本読書組合版宮沢賢治文庫

20170202 昨日、英宝社の社長の佐々木元さんと会っていて思い出したことがある。英宝社は、ジョン・ロナルド・ブリンクリー(1887-1964) が初代社長として創設された出版社であるが、実務の中心は、2代目社長となった佐々木峻氏(1910-93) であった(元さん…

海後宗臣、佐藤誠実、広池千九郎

20110407 海後宗臣、佐藤誠実、広池千九郎 ツイッター3月28日で発信した内容(下記のAとB)に関連して、武蔵野美術大学の高橋陽一先生より、論文抜き刷や書籍をお送りいただいた。これまで大学出版部のことなどで電話でお話ししたことのある方で、3月新刊の…

阪谷素、芳直、中江丑吉

20110404 阪谷素、芳直、中江丑吉 河野有理『明六雑誌の政治思想:阪谷素と「道理」の挑戦』(http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-036240-5.html)が刊行された(東京大学出版会、2011年3月29日第1刷)。洋学者が大部分を占める『明六雑誌』の寄稿者のうち、…

南原繁と富山県小杉高校

20110404 富山大学の佐藤幸男理事・副学長から電話をいただいた。富山大学出版会代表理事。2006年に私が同出版会にお伺いした際にもお会いした方である。用件は、富山県の小杉高校で南原繁についての講演を頼まれた、ついては講演の際に、3月2日の朝日新聞に…

長谷川辰之助=二葉亭四迷墓、染井霊園

長谷川辰之助=二葉亭四迷墓、染井霊園 染井霊園にある二葉亭四迷(1864-1909)の墓。刻まれた文字は、右に小さく「二葉亭四迷」そして真ん中に大きく「長谷川辰之助墓」。裏面には、大正13年3月に「東京外国語学校卒業生及有志」によって建てられたとある。長…

内田魯庵全集の欠陥

20110516 5月18日に東京外大で90分授業をしたときに、学生から内田魯庵についてもっと話してほしいと言われた。学生は山口昌男『内田魯庵山脈』を読んでいての希望だった。その時は時間の関係である側面を話す程度にとどめ、後日に連絡することとした。そし…

斎藤昌三と吉野作造

20170123 1920年代から1940年頃まで日本の出版文化の一翼を担った斎藤昌三(1897-1961)は、吉野作造・尾佐竹猛・木村毅・宮武外骨らが組織した明治文化研究会のメンバーでもあり、また、茅ヶ崎文化人クラブでは、東大法学部で吉野作造の同僚であった牧野英…

岡義武の学問

20161021 114年前の今日、1902年10月21日、政治史研究者の岡義武(東大名誉教授)が生まれました(1990年歿)。岡は東大の聞き取り記録『談話筆記』(非公開 1984)で、自分の学問を志す動機として、昭和初期に「大学に残って研究者になり、学問の研究を通して労…

平塚らいてうの消費組合運動: 小嶋翔論文を読んで

20160920 平塚らいてうの消費組合運動: 小嶋翔論文を読んで 小嶋翔「戦前期消費組合運動における理念と実際運営: 平塚らいてう「消費組合我等の家」に注目して」『日本経済思想史研究』16号(2016年3月)を読む。小嶋さんは、宮城県大崎市古川にある吉野作造記…