朝鮮活字文化の誕生:韓国清州古印刷博物館姉妹記念

20140426

ただいま印刷博物館。「韓国清州古印刷博物館姉妹提携10周年記念 朝鮮金属活字文化の誕生展」を見学。担当者の話しを聞きたいと思い、名刺を係員に渡したら、挨拶に来られたのが何と樺山紘一館長。恐縮です。樺山館長に、清州古印刷博物館を訪ねた際の拙文をお渡しした。

印刷博物館での講演とシンポジウムそしてレセプションを終え、帰宅途中。朱子学の受容はじめ日本に大きな影響を与えた朝鮮の印刷文化史について、このようにして学ぶ機会は初めて。充実した一日でした。

 印刷博物館での基調講演は、黄正夏(清州古印刷博物館室長)の「高麗時代の金属活字と『白雲和尚抄録仏祖直指心体要節』の印刷」。高麗朝後半、武人体制が政治統合のために文治政策を打ち出すことが印刷文化の発展を促すことなど、挫折した徳川家康の構想ではないか、と思わせるほど、興味津々の話題提供でした。
講演後に黄正夏氏に挨拶したら、何と氏は、拙文「『直指』との出逢い」を古印刷博物館の紀要に載せる際に韓国語に翻訳された方。恐れ入ります。

印刷博物館でのもう一つの基調講演は、藤本幸夫(富山大学名誉教授)の「朝鮮朝における金属活字と印刷・出版」。朝鮮朝金属活字の主な27種類の活字の流れを示し、その活字本の印面の特徴を説明。具体例に沿っての話しは多いに説得力あり。
そして、仏教に肩入れした高麗朝への反省から朝鮮朝は朱子学を国是とし、文治政治を謳い、文治のための出版であることは活字版のあとがきにあたる鋳字跋にも多く書かれているという。ただし、写本も木版も多く、活字版は政府による作成のみで、書籍総点数に占める活字版は数%。部数も50部ないし100部。中央で作った活字版は地方に送り、地方は必要な場合、被せ彫りをしたという。これは江戸日本とは異なる。
なお、藤本先生には四半世紀前に約束した企画『朝鮮印刷史』がある。改めて鄭重にお願いしたところ、いたく恐縮される。よろしくお願いいたします。