阪谷素、芳直、中江丑吉

20110404

 阪谷素、芳直、中江丑吉

河野有理『明六雑誌の政治思想:阪谷素と「道理」の挑戦』(http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-036240-5.html)が刊行された(東京大学出版会、2011年3月29日第1刷)。洋学者が大部分を占める『明六雑誌』の寄稿者のうち、阪谷素(さかたに・しろし;朗廬 1820−1881)は例外的に儒者であった。本書は、阪谷の眼から見ることによって、『明六雑誌』の、そして、開化期知識人の新たな相貌を浮き彫りにするものとして期待される。
 阪谷素については、阪谷芳直『三代の系譜』(みすず書房、1979年;現在、洋泉社MC新書)以来、関心を寄せてきたが、素に焦点を当てた研究が一冊の本となるとは思っていなかった。(論文として取り上げたものには、1996年に東大出版会から刊行した松本三之介『明治思想における伝統と近代』に収録した「新しい学問の形成と知識人」があるが。)
 芳直氏とは中江丑吉の縁で1992年11月にお会いし、その後、同氏の『中江丑吉論集成』を企画する話を進めたが、2001年の同氏の逝去により、実現できなかった。曾祖父にあたる阪谷素についての研究書を氏にご覧いただくことはかなわないが、上梓できたことは亡き氏に報告したい。