吉野作造と高田畊安/耕安

『吉野作造選集』に収録された日記に出てくるのは「高田耕安」。最初、茅ケ崎の南湖院の院長・高田畊安であることが特定できなかった。その後、1911年8月に高田畊安が国際結核病学会出席のためにローマに向ったが、ローマでのコレラ発生により学会が1年延長…

パブリケーション(出版すること=公開すること=公共すること)

私は私の意識の25時間目で、パブリケーション(出版すること=公開すること=公共すること)を考えているという妄想を抱いています。それは、24時間とは地続きではないような気がします。この妄想は、出版に携わった最初からあって、今でもうまく解釈できな…

日本における大学出版の歴史についての 私の仮説:

日本における大学出版の歴史についての 私の仮説: 例えば、イエズス会のキリシタン版は、日本のコレジオに付設された印刷所でなされたものがほとんどであり、コレジオを高等教育機関をみなすことができれば、近代日本の大学出版の「消された」先駆形態と言え…

大燈山鳳停寺:立原正秋ゆかりの寺

大燈山鳳停寺:立原正秋ゆかりの寺20110611 6月4日、安東市でのシンポジウムの合間を縫って、近郊の鳳停寺に行く。同行者は、卞崇道教授(中国社会科学院東洋哲学研究室)、古藤友子教授(国際基督教大学)、中尾友香梨教授(佐賀大学)。 大燈山鳳停寺は、…

南原繁『形相』について

南原繁研究会に参加。今日は、歌集『形相』の後半について報告がなされ、会員が一人一人コメント。南原批判を含めて自由な議論がなされる。私は、南原の歌集への斎藤茂吉の高い評価は、戦争を謳歌した戦時中の茂吉の戦後における補償作用のなせるワザではな…

早稲田大学大学出版部をめぐって

早稲田大学出版部をめぐって(070902 竹中英俊) 明治15年開校した東京専門学校は明治35年(1902年)早稲田大学と改称するが、明治19年創業の東京専門学校出版局(のち、出版部)もそれにあわせて早稲田大学出版部と改名した。早大では、大隈重信と小野梓を…

丸善百年史のなかの早稲田叢書

丸善百年史のなかの早稲田叢書070323竹中英俊 1980年に刊行された浩瀚な社史『丸善百年史』(上巻、下巻、資料編)は、欧米新知識の導入と舶来品の輸入とを手掛ける目的で発足し、その後紆余曲折を経て1969年に百年を迎えた丸善の記録であるだけに、出版史の…

川端康成を読む⑴

この連休の間、川端康成の作品を集中的に読んだ。手に取ったのは、集英社版『日本文学全集39-40 川端康成集(一)(二)』(1966年)。定価290円。半世紀前に購入して拾い読みした本である。(集英社版のこの全集は、埴谷雄高の『死霊』が収録していたり、また安価…

長谷川誠一『函館英学史研究』ーー武田斐三郎、名村五八郎、堀達之助

2019/05/04 長谷川誠一『函館英学史研究』(ニューカレント インターナショナル刊 1986.11)読了。A5判上製カバー350頁。これは、銀閣寺近くの古書店 竹岡書店で購入したもの。この本は井上能孝『箱館英学事始め』(北海道新聞社 1987)と共にハコダテ英学史…

林子平『海国兵談』自費出版見積り

『季刊創文』No.13(2014春)の村上哲見「江戸時代出版雑話」が面白い。日本の書籍出版は、仏典から始まり、漢籍の翻刻、かな文字の古典に及んだことを示し、そしてこれら「物の本」を「本」というのであって、通俗読み物や絵本などは「本」ではなく「草紙」と…

陸奥宗光「東北紀行」

村井章介先生より「陸奥宗光「東北紀行」:翻刻と解題(上)」(『東京大学史料編纂所研究紀要』31、2021年3月)を恵贈さる。元老院幹事の官にあった陸奥宗光が、1876年8〜9月に、太政大臣三条実美を頭とする北海道・東北地方巡視に随行した際の旅行記。(上)…

関川夏央・谷口ジロー『『坊っちゃん』の時代』全5巻

関川夏央・谷口ジローの劇画『『坊っちゃん』の時代』全5巻(双葉社1987-97)を読み終えた。最初に大逆事件を扱った『第四部 明治流星雨』を読み、これは並々ならぬ力作であると感じ入り、ほかの巻をも読まずばなるまいと思い、入手して読んだのである。 全巻…

明治文化研究会の機関誌『新旧時代 明治文化研究』

明治文化研究会の機関誌『新旧時代 明治文化研究』第三年第七号(1927.7) を入手。明治初期の外交顧問ルジャンドルを取り上げた吉野作造の「日本外交の恩人・将軍李仙得」、村上英俊の事績を追った溝口貞治「仏学始祖村上英俊の伝記を編む経路」など面白い。…

吉野作造ー福澤諭吉ー桂川甫周(四代と七代)の連関

【吉野作造ー福澤諭吉ー桂川甫周(四代と七代)の連関】 ヤフオクで落札した、吉野作造著『主張と閑談第二集 露国帰還の漂流民 幸太夫』(福永書店、大正13年9月20日発行、定価1円50銭)が届いた。四六判変型並製。90年前の本だ。表紙が外れかかっている際どい…

林勉先生のこと

万葉集や日本書紀の研究者である林勉先生が昨2020年2月13日に亡くなられたことを本日知りました。95歳。わたしが大学2、3年生(1972-73) の時、先生の「古代ゼミ」で教えを受けました。古事記、万葉集、日本書紀、本居宣長などを読みました。 先生は2019年1…

都築勉『おのがデモンに聞け―小野塚・吉野・南原・丸山・京極の政治学』(吉田書店)読了。

都築勉『おのがデモンに聞け―小野塚・吉野・南原・丸山・京極の政治学』(吉田書店)読了。素晴らしく面白い本。5人の政治学者(小野塚喜平次、吉野作造、南原繁、丸山眞男、京極純一)を取り上げている、素晴らしく面白い本。 簡単に書けば:①20世紀日本政治学…

佐々木揚先生追悼

東アジア近代史学会の『東アジア近代史』第24号(2020.6) に「佐々木揚先生追悼記事」として、檜山幸夫、川島真、中見立夫の3人が追悼文を寄せている。佐々木先生は佐賀大学名誉教授。2000年に『清末中国における日本観と西洋観』を東京大学出版会から刊行…

田山花袋『重右衛門の最後』

田山花袋『重右衛門の最後』を読了。これは、自然主義作家花袋が生まれる画期となった作品と言われる。初版は1902年(明治35)5月、新声社のアカツキ第五篇として刊行された。新声社は新潮社の前身。『重右衛門の最後』は連作として構想されながら続かなか…

西野嘉章著『装釘考』(玄風舍発行、青木書店発売、2000年)

西野嘉章著『装釘考』(玄風舍発行、青木書店発売、2000年)を再読。凝った造りで、上製、ジャケット・函付。サイズは224×159mmなので菊判変型ないしA5判変型。活版で、おそらく原版刷。本文は概ね旧字体。本文用紙も敢えて上質紙ではないものを使用。「装釘…

カラフトの満漢日文史料 ナヨロ文書

カラフトの満漢日文史料: 中見立夫(東京外大名誉教授)の「満史満学研究劄記」(『満族史研究』18号、2019.12)を読んでいたら、北大図書館所蔵の「カラフトナヨロ惣乙名文書(ヤエンコロアイヌ文書)」が2019年度に重要文化財に指定されたことが出ていた。北…

【坂野潤治先生逝去にあたり思い出すこと】

東京大学出版会でわたしが編集局に配属されたのは1980年。その時点で、坂野先生の担当者は、『明治憲法体制の確立』の編集者渡辺勲と、『教材日本憲法史』の編集者羽鳥和芳という先輩がいた。それぞれ『日本近代史』と『日本憲法史』との執筆を先生と約束し…

ザビエル像:茨木市立キリシタン遺物史料館

昨日、上野の東京国立博物館の「桃山」展を見に行った。時間予約制で、混んではいないため、見たいものをゆっくり見ることができる。国宝クラスの沢山の逸品の中で、嬉しかったのは「聖フランシスコ・ザビエル像」。初めて実物をゆっくり見て、その万葉仮名…

追悼 渡辺毅先生(「ぼくたちの〈日露〉戦争」の作者)

作家の渡辺毅先生が8月24日に亡くなられた。享年86.わたしにとっては宮城県古川高校の時の現代国語の先生である。樺太生れで、その体験を活かした「ぼくたちの〈日露〉戦争」で坪田譲治文学賞を受賞。同作品は集英社の『戦争と文学17巻 帝国日本と朝鮮・樺…

南原繁研究会第9回夏期研究発表会:高橋勇一 伊藤貴雄 大庭治夫 川口雄一 山口周三

昨日午後は、南原繁研究会 第 9 回夏期研究発表会。対面とリモートとの双方で行われた。参加者は16+14人。司会の前半は宮崎文彦、後半は栩木憲一郎。5人による発表は、試論・私論的なものも含めて教えられるところが多いものだった。 《高橋勇一 「南原繁…

『堺利彦伝』

『堺利彦伝』(中公文庫、1978) これは、万朝報に入るまでの前半生をまとめたものだが、素晴らしくいい。生れ故郷の豊前豊津での幼時を描いた精細な文章の郷愁あふるる情感、また、成長の過程で出会った多様な人物を簡潔に描く愛情あふるる観察。感服する。…

『日本政党史論』全7巻復刊と升味準之輔 

2010年8月13日、升味準之輔先生が亡くなられた。もう10年になる。逝去後、2011年12月、手沢本の書き込みを反映した『日本政党史論』全7巻を御厨貴先生の解説を付して復刊した。復刊に関する当時の拙文を以下に掲載する。(初出は、大学出版部協会ニュースな…

戦後初期に原爆の国際法違反を訴えた弁護士 岡本尚一

広島市長を務めた平岡敬がジャーナリスト時代に著した『無援の海峡 ヒロシマの声、被爆朝鮮人の声』(影書房、1983年)を読んでいて、原爆投下を国際法違反とみなし、米国や投下の責任者を裁くことはできないか、と世に訴えた弁護士がいることを知った。岡本…

吉野作造と真山青果と佐左木俊郎

昨日は、茅ヶ崎の古書店で、日本近代文学研究者の岩佐壮四郎先生(関東学院大学名誉教授)と偶然にお会いし、日本の自然主義文学また作家の真山青果などについてお聞きできたのは僥倖。ちょうど、真山青果(1878年生れ)仲立ちとして、吉野作造と佐左木俊郎…

佐左木俊郎と吉野作造:「土百姓」ということ

宮城県大崎市生まれの吉野作造と佐左木俊郎との共通点のひとつは、自らを「百姓」「土百姓」の裔と称したことである。例えば、吉野は、1925年6月17日の日付を持つ自己紹介文(教え子に与えた写真に裏書きしたもの)次のように書いている(『吉野作造選集 12…

書評を書くということ

書評にあたっては、前提として⓪本を読まないで書く芸当はしないこと、そして心掛けているのは、①本を読んでいない人でも概要が分かること、②本を読んだ人には共感できる部分があると思ってもらうこと、③著者にはそのような読み方があるのかと思わせること、④…