Press からPublishingへ

わたしは、活版からコンピュータ写植に移行した1990年代初めから、「University Press からUniversity Publishingへ」というスローガンを東大出版会および大学出版部協会で訴えようと考え、英語ネイティヴの方にUniversity Publishing という表現が可能かと…

『闘いの火をかかげ続けて 岡崎一夫のメッセージ』

札幌出身で茅ヶ崎に住んだ岡崎一夫の生涯と事績を記した『闘いの火をかかげ続けて 岡崎一夫のメッセージ』(イクォリティ1993)を雪降る札幌のホテルで読了。岡崎は1899年3月1日札幌生れ。東京帝大法学部を卒業して弁護士となり自由法曹団に加入して、1927年…

佐左木俊郎と小林多喜二 続

小林多喜二・立野信之『プロレタリア文学論』(天人社1931年3月31日発行、ほるぷ複刻版)読了。この中の多喜二「プロレタリア文学の新しい「課題」」(初出は読売新聞1930.4.19,22)に「芸術派の佐左木俊郎」が出てくる。つまり、多喜二によって、プロ文学とは…

筑摩書房編集者 石井立について

(10年前のものですが) 今日12月28日日経新聞文化欄に「昭和文壇支えた編集者魂」という題で北海学園大学の石井耕教授が寄稿している。父は筑摩書房の編集者であった石井立(1923- 64)。立の遺した資料を整理していて気付いた興味深いことを綴っている。ちな…

佐左木俊郎と小林多喜二

『佐左木俊郎探偵小説選Ⅱ』(論創社、2021年3月30日)に「佐左木俊郎の風景」を寄稿したが、新潮社の編集者であり、農民文学・プロレタリア文学も著していた佐左木が、他のプロレタリア作家とどのような繋がりがあるかについては十分に調べることができなかっ…

久保栄『五稜郭血書』

久保栄の戯曲『五稜郭血書』(初出 日本プロレタリア演劇同盟出版部1933)読了。これは築地小劇場創立10周年記念として、新築地劇団・左翼劇場など新劇団による合同公演が、千田是也・久保栄の共同演出でなされたものである。 この作品は、慶応4年=明治元年…

川口大三郎君事件

つらい本を読んだ。新刊の樋田毅『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(文藝春秋) 。今日 11 月8日は奇しくもこの「川口大三郎事件」が1972 年に起きてからちょうど 49 年目の日にあたる。三年生であったわたしも「義憤」にかられ、この革マ…

木下順二『蛙昇天』

木下順二『蛙昇天』を読了。これは「徳田要請問題」(1950年2月、シベリア抑留からの帰還者が、帰還が遅れたのは共産党書記長徳田球一がソ連に要請したことによると主張した事件)により、収容所で通訳を務めた抑留者で哲学徒の菅季治が国会喚問を受けた翌日…

久保栄『火山灰地』を読む

久保栄『火山灰地』(1937-38)読了。久保は1900年、野幌煉瓦工場社長、札幌商工会議所会頭を務めた久保兵太郎の次男として札幌に生まれた。東大でドイツ文学を学び、卒業後、築地小劇場で小山内薫や土方与志から演劇の指導を受けた。その後、新築地劇団、新…

伊藤整の長編自伝小説『若い詩人の肖像』(初版、新潮社、1956) 読了

札幌のホテルで伊藤整の長編自伝小説『若い詩人の肖像』(初版、新潮社、1956) 読了。この作品は、「海の見える町」(『新潮』1954年3月)、「若い詩人の肖像」(『中央公論』1955年9-12月)、「雪の来るとき」(『中央公論』1954年5月)、「父の死まで」(『…

安東と清州の会議(2017年8月)に参加して

【旧稿掲載】 安東と清州の会議に参加して竹中英俊 20171008 この8月、東洋Forum 主幹の金泰昌先生の招きにより、二つの国際会議に参加した。一つは、10日から12日まで、安東の陶山書院sunbi文化修練院で開催された「2017年 嶺南退渓学研究院・陶山書院sunb…

坂手洋二と満田康弘のカウラ事件

坂手洋二の戯曲『カウラの班長会議 side-A』(松本工房、2021.8.20) を読んだ。2014年にオーストラリアのカウラで上演されたこの劇は満田康弘監督のドキュメンタリー映画『カウラは忘れない』にも登場する。これらで扱われるカウラ事件とは、1944年8月5日、…

由井りょう子『黄色い虫 船山馨と妻・春子の生涯』を札幌で読む

船山馨が生まれ青少年期を過ごした札幌の地で、由井りょう子『黄色い虫』(小学館、2010)読了。サブタイトルが「船山馨と妻・春子の生涯」とあるが、内容的には「船山馨の妻・春子の生涯」と言うべきだろう。作家船山馨の作品には思い入れせず、春子の遺した…

関川夏央・谷口ジローの劇画『『坊っちゃん』の時代』全5巻(双葉社1987-97)

関川夏央・谷口ジローの劇画『『坊っちゃん』の時代』全5巻(双葉社1987-97)を読み終えた。最初に大逆事件を扱った『第四部 明治流星雨』を読み、これは並々ならぬ力作であると感じ入り、ほかの巻をも読まずばなるまいと思い、入手して読んだのである。 全巻…

富岡多惠子『湖の南』

富岡多惠子『湖の南』(新潮社)読了。湖とは琵琶湖である。その南、大津が主な舞台。大津に住むようになった著者の随筆的な話しに、明治24年の大津事件の経緯と背景を探る話しで構成されている。特にロシアの皇太子ニコライを襲った大津事件については、津田…

山内進『北の十字軍』

山内進『北の十字軍』(講談社選書メチエ 1997; 講談社学術文庫 2011)再読。 ヨーロッパ北方の異教徒をキリスト教化(カトリック化)すべく、ローマ教皇の名の下にバルト地域(西スラヴ・ヴェンデ、プロイセン、リトアニア、リヴォニア、エストニア)そして正…

伊藤整の「石狩」と石狩川捷水路

伊藤整「石狩」を読了。初出は単行本の『石狩」(版画莊文庫、1937年)。伊藤整は小樽市郊外の塩谷で育った。小樽までは歩きで1時間半ほどかかる。塩谷海水浴場があり、この小説にも登場する。10代後半の主人公の知り合いの女性二人をめぐる心の葛藤を主とし…

丸山眞男と戦後初期出版界(レジュメ)

丸山眞男と戦後初期出版界 竹中英俊 2014.8.22 大学出版部協会夏季研修会 はじめに*富山県と南原繁/南原繁と東京大学出版会/南原繁と丸山眞男*丸山眞男は1914年3月22日、大阪天王寺村に生まれ、今年が生誕百年*記念行事 ・3月22日、丸山眞男手帖の会主…

船山馨『蘆火野』

船山馨『蘆火野(あしびの)』読了。400字1300枚の長編歴史ロマン。1972年4月から翌年6月まで朝日新聞に連載され、73年7月に朝日新聞社から刊行された。幕末の箱館と江戸とパリを舞台。主人公は、みなし子のおゆきと、直参小普請組でいち早く武士身分を脱…

斎藤勇が『南原繁著作集』第6巻の月報に寄せた「毅然たる政治学者の和歌」

斎藤勇が『南原繁著作集』第6巻の月報に寄せた文章に「毅然たる政治学者の和歌」がある。南原の歌集『形相』について触れたものだが、その中で太平洋戦争中のある思い出を語っている。以下に登場する著者は和辻哲郎、著書は『日本の臣道、アメリカの国民性』…

吉野作造と高田畊安/耕安

『吉野作造選集』に収録された日記に出てくるのは「高田耕安」。最初、茅ケ崎の南湖院の院長・高田畊安であることが特定できなかった。その後、1911年8月に高田畊安が国際結核病学会出席のためにローマに向ったが、ローマでのコレラ発生により学会が1年延長…

パブリケーション(出版すること=公開すること=公共すること)

私は私の意識の25時間目で、パブリケーション(出版すること=公開すること=公共すること)を考えているという妄想を抱いています。それは、24時間とは地続きではないような気がします。この妄想は、出版に携わった最初からあって、今でもうまく解釈できな…

日本における大学出版の歴史についての 私の仮説:

日本における大学出版の歴史についての 私の仮説: 例えば、イエズス会のキリシタン版は、日本のコレジオに付設された印刷所でなされたものがほとんどであり、コレジオを高等教育機関をみなすことができれば、近代日本の大学出版の「消された」先駆形態と言え…

大燈山鳳停寺:立原正秋ゆかりの寺

大燈山鳳停寺:立原正秋ゆかりの寺20110611 6月4日、安東市でのシンポジウムの合間を縫って、近郊の鳳停寺に行く。同行者は、卞崇道教授(中国社会科学院東洋哲学研究室)、古藤友子教授(国際基督教大学)、中尾友香梨教授(佐賀大学)。 大燈山鳳停寺は、…

南原繁『形相』について

南原繁研究会に参加。今日は、歌集『形相』の後半について報告がなされ、会員が一人一人コメント。南原批判を含めて自由な議論がなされる。私は、南原の歌集への斎藤茂吉の高い評価は、戦争を謳歌した戦時中の茂吉の戦後における補償作用のなせるワザではな…

早稲田大学大学出版部をめぐって

早稲田大学出版部をめぐって(070902 竹中英俊) 明治15年開校した東京専門学校は明治35年(1902年)早稲田大学と改称するが、明治19年創業の東京専門学校出版局(のち、出版部)もそれにあわせて早稲田大学出版部と改名した。早大では、大隈重信と小野梓を…

丸善百年史のなかの早稲田叢書

丸善百年史のなかの早稲田叢書070323竹中英俊 1980年に刊行された浩瀚な社史『丸善百年史』(上巻、下巻、資料編)は、欧米新知識の導入と舶来品の輸入とを手掛ける目的で発足し、その後紆余曲折を経て1969年に百年を迎えた丸善の記録であるだけに、出版史の…

川端康成を読む⑴

この連休の間、川端康成の作品を集中的に読んだ。手に取ったのは、集英社版『日本文学全集39-40 川端康成集(一)(二)』(1966年)。定価290円。半世紀前に購入して拾い読みした本である。(集英社版のこの全集は、埴谷雄高の『死霊』が収録していたり、また安価…

長谷川誠一『函館英学史研究』ーー武田斐三郎、名村五八郎、堀達之助

2019/05/04 長谷川誠一『函館英学史研究』(ニューカレント インターナショナル刊 1986.11)読了。A5判上製カバー350頁。これは、銀閣寺近くの古書店 竹岡書店で購入したもの。この本は井上能孝『箱館英学事始め』(北海道新聞社 1987)と共にハコダテ英学史…

林子平『海国兵談』自費出版見積り

『季刊創文』No.13(2014春)の村上哲見「江戸時代出版雑話」が面白い。日本の書籍出版は、仏典から始まり、漢籍の翻刻、かな文字の古典に及んだことを示し、そしてこれら「物の本」を「本」というのであって、通俗読み物や絵本などは「本」ではなく「草紙」と…