2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

伝説の江川書房の本:嘉村礒多『途上』限定500部

江川書房の本:嘉村礒多『途上』限定500部、函入り、1932年8月。「秋立つまで」「途上」の二篇を収録。題字は嘉村礒多。印刷は白井赫太郎。製本は中野利一。函、表紙、本文用紙、すべてに越前手漉楮紙を使用。装幀と刊行は江川正之。 この『途上』は江川書…

嘉村礒多「崖の下」を読む

嘉村礒多(1897-1933)の初期の代表作「崖の下」(『不同調』1928.7)400字48枚を『私小説名作選上』(中村光夫選、講談社文芸文庫)で読む。掲載誌『不同調』は「文壇の大久保彦左」と言われた中村武羅夫主宰の雑誌で、嘉村はその記者をしていた。 「崖の下」…

岡義武『独逸デモクラシーの悲劇』(アテネ文庫1949)

昨日の菅義偉前首相による安倍晋三元首相追悼において岡義武『山県有朋』が言及された。岡には名著『独逸デモクラシーの悲劇』もある。以下は、2016/09/28の拙文。 梅田の阪急古書の街の太田書店で見つけた岡義武著『独逸デモクラシーの悲劇』(弘文堂、アテ…

佐左木俊郎「明日の太陽」について

佐左木俊郎「明日の太陽」について竹中英俊 2022/09/25 『佐左木俊郎選集』(英宝社1984)の「年譜」の1931年(昭和6年)の項に「長編小説「明日の太陽」を6年2月1日より『河北新報』に連載、同年7月3日第150回をもって完結。」と記載されている。佐左木…

丸山眞男と高木博義 「96年の会」と「60年の会」

名古屋・丸山眞男読書会「96年の会」発行の『第100回「96年の会」丸山眞男没後25周年記念会記念文集』(2022.8.15発行)を寄贈さる。同会は丸山逝去の年1996年秋に高木博義氏の呼びかけで始まったもの。年4回のペースで読書会・公開記念会を持ち、5年ごとに…

中江丑吉・市塵の思考者について

今日の南原繁研究会では、南原繁と東京帝国大学法科大学政治学科で同期の中江丑吉(中江兆民の息子)が話題になった。 かつて中江丑吉について、湘南科学史研究会で「中江丑吉・市塵の思考者について」と題して話をしたことがある。その趣旨を研究会員に送っ…

誄詞(石井和夫氏弔辞)

今日は18時から月例の南原繁研究会があり、久しぶりに参加した。 研究会では、8月に逝去された元会員の石井和夫氏追悼の誄詞(るいし)を述べた。石井氏は、丸山眞男『日本政治思想史』を担当した編集者である。以下、その誄詞を掲載する。 誄詞 南原繁研究…

東大出版会理事としての丸山眞男:石井和夫の証言

丸山眞男先生は1957年から1960年までの4年間、東京大学出版会の理事として務められた。その時の様子を編集主任であった石井和夫から聞いた。以下の通り。《石井 当時、東大法学部からは法律と政治と二人の理事が出ることが多かったのです。辻清明先生のあと…

石井和夫氏逝去

東京大学出版会の創業時(1951年)に編集担当責任者の辞令を南原繁東大総長(東京大学出版会初代会長)から発令された石井和夫(1927)が、8月24日に逝去されました。享年95.覚悟していたとはいえ、寂寥感が募ります。 石井和夫については、同氏が2009年に…