大槻文彦『大言海』の表記について

ことわざについての出版企画を検討中。文中、1956年版の大槻文彦『新訂 大言海』が出てくる。わたしが持っている1932-35年版の4冊本『大言海』でチェックしている。
言海の旧仮名遣いはメリットであるが、今日の五十音順とは異なる配列、変体仮名による表記には、わたしでも戸惑う。
これに関連して『言海』のAmazonレビューに、似たような戸惑いを書いてあったものを見つけたので紹介する。
[以下、引用]
①『言海』は、言葉を「いろは」順ではなく、五十音順に配列しているが、現在の「い」で始まる語は、ア行の「い」とワ行の「ゐ」に分けて表記されており、同様に、「え」で始まる語は、ア行の「え」とワ行の「ゑ」に分けて表記されている。つまり、『言海』は、古語辞典と同じように歴史的仮名遣で配列されており、「井戸」ならワ行の「ゐど」で、「笑顔」ならワ行の「ゑがほ」で引く必要がある。当然、ハ行にも注意が必要で、「家」は「いへ」で引くことになる。

②『言海』が出版された明治19年1886年)当時は、平仮名の字体がまだ統一されておらず、さまざまな変体仮名が使用されていた時代だった。『言海』の場合は、「こ」には「古」を崩した変体仮名、「し」には「志」を崩した変体仮名が使用されていて、「に」には「尓」の変体仮名もよく使用されている。また、本文のほとんどのページで、「こと(事)」の代わりに合略仮名の「ヿ」が使用されている。つまり、『言海』の歴史的仮名遣は、現代の一般的な歴史的仮名遣とは異なっている。

③使用される漢字はすべて旧字なので、「五十音図」が「五十音圖」、「体言」が「體言」、「発声」が「發聲」と表記されるなど、旧字を知らないと、まったく別の漢字かと誤解しかねないし、まず文章がきちんと読めない。