真藤順丈『宝島』

真藤順丈『宝島』(講談社) を読了。山田風太郎賞および直木賞受賞作品。沖縄返還に至る戦後史を舞台とした小説であると知り、手にとってみた。400字原稿用紙960枚、四六判540ページの長編であるが、巻置く能わず、一気に読ませる魅力を持った作品だった。
本書は、沖縄戦の時に10歳から13歳の幼馴染の4人を主要な登場人物とし、サンフランシスコ条約が発効した1952年(つまり、その4月28日を安倍政権が「主権回復の日」とし、沖縄が「屈辱の日」とする年」) から、沖縄返還の1972年に至る20年間(つまり、沖縄がアメリカの施政権下にあった間)を対象として、その沖縄で生きていくことの抗いを、さまざまな事件の中で描いた、言わば、社会派ビルドゥングスロマンと呼べるものである。
戦後沖縄とは何であったのか(引いては近代沖縄は何であったのか)、そして戦後日本は何であったのか (引いては近代日本とは何であったのか)について、今日の沖縄基地問題(つまり日本問題)を射程に入れて考えさせられる、優れたエンターテイメント小説として書き切った著者の力量は相当なものである。おススメの作品である。

***

真藤順丈『宝島』のクライマックスは、1970年12月22日の「コザ暴動」である。わたしは1ヶ月前11月25日の三島由紀夫割腹事件を受け止めかねていたままにこの「コザ暴動」に接し、日本が、世界が、だけでなく、自分がどこに進んでいくのか、全く先が見えなかったことを想起した。
それにしても、コザ暴動を描く真藤の筆致は見事である。「たっくるせ」とはおそらく「叩き殺せ」という意味だろうが、それを著者は31回繰り返す。この箇所を声を出して読んでみたら、自分自身が「コザ暴動」の一員であることを感得した。

2019/03/17