同伴者作家としての佐左木俊郎:宮本顕治の「同伴者作家」

【同伴者作家としての佐左木俊郎】

宮本顕治「同伴者作家」(1931.4月号) を『宮本顕治文芸評論選集 第一巻』(新日本出版社1980)で読む。トロツキー文学論での同伴者作家の規定に準拠しながら、広津和郎を主とした対象として論じ、広津らは革命的プロレタリア文学者ではないが、反動的なブルジョア・イデオローグと区別する意味において、プロレタリアートの同伴者であるとして、広津らが進歩を断念しないかぎり、批判的に成長せしめねばならない、としたものである。そして、こういう作家の一例として、佐左木俊郎をあげている。

 残念ながら、この宮本論文は佐左木俊郎の具体的な作品をあげていないので、佐左木俊郎についての宮本顕治の論拠を検証することはできないが、しかしながら、この宮本の文芸評論は、同時期の小林多喜二の文芸評論と比較しても、(今日批判されるべきものとしても)かなり優れたものである。

 なお、この第一巻には、宮本による140頁にもわたる「あとがき」(1980年10月4日付け)が収録されていて、それは、戦前のプロレタリア文学と戦後の民主主義文学についての著者なりの(政治的・文学的)  総括となっていて、貴重である。(ただ、運動から離れた作家、離党した作家、除名された作家についての評価は、別途に検討されなければならないだろう。)f:id:takeridon:20220619230812j:image
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