佐左木俊郎、新作探偵小説全集、探偵クラブ

新潮社から「新作探偵小説全集」全10巻が1932年から33年にかけて刊行された。当時の探偵小説作家を糾合した書き下ろし新作シリーズである。これは甲賀三郎が企画したものであるが、新潮社の社員であった佐左木俊郎は1929年から『文学時代』の編集を担当し、探偵作家を積極的に登用し、自らも探偵小説を書いていたこともあり、この全集の企画段階からかかわり、また自ら作品『狼群』を創作した。

この全10巻の構成は以下の通り。

第1巻  蠢く触手 江戸川乱歩

第2巻  奇蹟の扉 大下宇陀児

第3巻  姿なき怪盗 甲賀三郎

第4巻  狼群 佐左木俊郎

第5巻  疑問の三 橋本五郎

第6巻  鉄鎖殺人事件 浜尾四郎

第7巻  獣人の獄 水谷準

第8巻  白骨の処女 森下雨村

第9巻  暗黒公使 夢野久作

第10巻  呪ひの塔 横溝正史

 


このシリーズで特徴的なのは、各巻の付録として「探偵クラブ」という40ページ前後の冊子を発行したことである。これには、執筆者全員による「殺人迷路」と題する連作小説が連載された。森下雨村大下宇陀児横溝正史水谷準江戸川乱歩橋本五郎夢野久作浜尾四郎、佐左木俊郎、甲賀三郎の順番である。

書き下ろしの新作のうち、江戸川乱歩の『蠢く触手』は代作と言われ、また佐左木俊郎は『狼群』を完成することなく、このシリーズの刊行中の1933年3月14日に作者が死亡した。あとは奥村五十嵐が引き継ぎ、予定通り刊行された。

この付録の「探偵クラブ」第10号(1933年4月23日 36頁)の目次は次の通りであるが、注目すべきは「佐左木俊郎氏の思出」が特集されていることである。このたび、この「探偵クラブ」第10号のPDFを仙台で出版社「荒蝦夷」を主宰する土方正志さんから送っていただき、一通り目を通すことができた。江戸川乱歩横溝正史甲賀三郎の名前が見える。その目次を掲載する。

 


可愛いい小豚氏

全集の完結に際して  甲賀三郎

殺人迷路(十·完)(小脱)  甲賀三郎

探偵小説作家オンパレード  松下富士夫

佐左木俊郎氏の思出

  探偵小説界の為に惜しむ  江戸川乱歩

  力自慢の話ーつ  楢崎務

  近藤勇の刀  橋本五郎

  昭文院雪耕俊郎居士  近藤一郎

  微笑の思ひ出   水谷準

  烏山時代のー挿話  奥村五十嵐

  東京パンの思ひ出  横溝正史

  亡友佐左木君  大下宇陀児

  佐左木俊郎君を悼む  甲賀三郎

僕の「日本探偵小説史」(十・完)  水谷準

新作探偵小説全集広告  甲賀三郎

編輯後記


なお連作小説「殺人迷路」は、『幻の探偵小説雑誌  「探偵クラブ」傑作選』(光文社文庫)に収録されている。

新潮社から「新作探偵小説全集」全10巻が1932年から33年にかけて刊行された。当時の探偵小説作家を糾合した書き下ろし新作シリーズである。これは甲賀三郎が企画したものであるが、新潮社の社員であった佐左木俊郎は1929年から『文学時代』の編集を担当し、探偵作家を積極的に登用し、自らも探偵小説を書いていたこともあり、この全集の企画段階からかかわり、また自ら作品『狼群』を創作した。

この全10巻の構成は以下の通り。

第1巻  蠢く触手 江戸川乱歩

第2巻  奇蹟の扉 大下宇陀児

第3巻  姿なき怪盗 甲賀三郎

第4巻  狼群 佐左木俊郎

第5巻  疑問の三 橋本五郎

第6巻  鉄鎖殺人事件 浜尾四郎

第7巻  獣人の獄 水谷準

第8巻  白骨の処女 森下雨村

第9巻  暗黒公使 夢野久作

第10巻  呪ひの塔 横溝正史

 


このシリーズで特徴的なのは、各巻の付録として「探偵クラブ」という40ページ前後の冊子を発行したことである。これには、執筆者全員による「殺人迷路」と題する連作小説が連載された。森下雨村大下宇陀児横溝正史水谷準江戸川乱歩橋本五郎夢野久作浜尾四郎、佐左木俊郎、甲賀三郎の順番である。

書き下ろしの新作のうち、江戸川乱歩の『蠢く触手』は代作と言われ、また佐左木俊郎は『狼群』を完成することなく、このシリーズの刊行中の1933年3月14日に作者が死亡した。あとは奥村五十嵐が引き継ぎ、予定通り刊行された。

この付録の「探偵クラブ」第10号(1933年4月23日 36頁)の目次は次の通りであるが、注目すべきは「佐左木俊郎氏の思出」が特集されていることである。このたび、この「探偵クラブ」第10号のPDFを仙台で出版社「荒蝦夷」を主宰する土方正志さんから送っていただき、一通り目を通すことができた。江戸川乱歩横溝正史甲賀三郎の名前が見える。その目次を掲載する。

 


可愛いい小豚氏

全集の完結に際して  甲賀三郎

殺人迷路(十·完)(小脱)  甲賀三郎

探偵小説作家オンパレード  松下富士夫

佐左木俊郎氏の思出

  探偵小説界の為に惜しむ  江戸川乱歩

  力自慢の話ーつ  楢崎務

  近藤勇の刀  橋本五郎

  昭文院雪耕俊郎居士  近藤一郎

  微笑の思ひ出   水谷準

  烏山時代のー挿話  奥村五十嵐

  東京パンの思ひ出  横溝正史

  亡友佐左木君  大下宇陀児

  佐左木俊郎君を悼む  甲賀三郎

僕の「日本探偵小説史」(十・完)  水谷準

新作探偵小説全集広告  甲賀三郎

編輯後記


なお連作小説「殺人迷路」は、『幻の探偵小説雑誌  「探偵クラブ」傑作選』(光文社文庫)に収録されている。