追悼 渡辺毅先生(「ぼくたちの〈日露〉戦争」の作者)

作家の渡辺毅先生が8月24日に亡くなられた。享年86.わたしにとっては宮城県古川高校の時の現代国語の先生である。樺太生れで、その体験を活かした「ぼくたちの〈日露〉戦争」で坪田譲治文学賞を受賞。同作品は集英社の『戦争と文学17巻 帝国日本と朝鮮・樺太』に収録され、先生はそれを喜ばれていた。歴史小説も書かれたが、『季刊文科セレクション』(2017)掲載の「たみ子の人形ーーあの年の夏」 はソ連侵攻前後の樺太を舞台として時代に翻弄される少年たちを主人公とした佳作である。

昨年6月16日に宮城県大崎市岩出山にお住まいの先生宅を訪れ、半世紀のご無沙汰を詫び、同地出身の作家佐左木俊郎についてお話しをうかがった。先生は佐左木俊郎生誕100年記念の『熊の出る開墾地』(英宝社、2000)に「農民を知りすぎていた佐左木俊郎の文学」を寄せている。

その訪問時に、写真を撮らせていただいた。「竹中君、その写真を遺影にするから送ってくれよ」と言われ、「写真は送りますが、遺影だなんて。まだまだお元気でいらして下さい。来年、『佐左木俊郎探偵小説選1、2』ができましたらお届けにあがりますので、またお会いできることを楽しみにしています。」と申し上げた。それから1年余、幽明界を異にしてしまった。本をお見せすることも叶わなかった。ご冥福を祈るばかりである。