丸山眞男の吉野作造評価: 「科学としての政治学」の注記より
20140501
丸山眞男『政治の世界 他十篇』(岩波文庫、2014.2)に収録された、最初の論文「科学としての政治学:その回顧と展望」を読む。これは敗戦から2年を経ない1947年6月の『人文』に発表されたもの。編者の松本礼二によれば《戦後日本の政治学の出発点として繰り返し回顧される重要な論文である。》
それでは丸山は敗戦以前の政治学をどう見ていたのか。彼はこう断ずる。《少くも我国に関する限り、そもそも「政治学」と現実の政治とが相交渉しつつ発展したというようなためしがないのである。》そのような日本の政治学の「不妊性」の原因は、根本的には明治憲法が「不磨」として打ち出した国家体制にあるとする。
但し丸山は、このような断定に注記して、ユニークな政治学者として吉野作造の名前をあげて、以下のように述べる。《我国の過去の政治学者で、その学説を以て最も大きな影響を時代に与えたのは、いうまでもなく吉野作造博士である。大正時代のデモクラシー運動は吉野博士の名を離れて考えることは出来ない。しかし吉野博士の民本主義に関する諸論文は理論的というよりむしろ多分に啓蒙的なものであり、博士の学問的業績としては政治史とくに日本政治史の法が重要である。ともあれ、博士は上の点でユニークな存在であることは否定できない。》と。
さて、この丸山の吉野評をどう読むか。