笠松幸一「日本の民主思想が実現したJ.デューイの東京帝国大学講演」: 渋沢栄一、新渡戸稲造、吉野作造

20140524

 

笠松幸一「日本の民主思想が実現したJ.デューイの東京帝国大学講演」(『研究紀要』第75号、日大経済学部)読了。この論文は、新渡戸稲造渋沢栄一吉野作造に注目し、1919年のデューイ東大講演と彼らとの思想的・実際的関わりを明らかにしようとしたもの。
デューイ来日の前年1918年に東大法学部に開講された「アメリカ研究講座」(ヘボン講座、米国憲法・政治・外交講座:新渡戸、美濃部達吉、吉野が講義)は、アメリカの銀行家ヘボンの申し出を渋沢栄一が仲介することにより実現したものであった。ここに渋沢、新渡戸、吉野のつながりがある。
新渡戸とデューイは時期は別だが、初代学長ダニエル・ギルマンのもとのジョンズ・ホプキンズ大学に学び、またそれぞれ歴史学政治学のハーバート・アダムズの指導を受けている。デューイ夫妻は日本滞在時、新渡戸邸で新渡戸夫妻とともに時を過ごしている。
吉野作造との関連では、デューイは吉野を黎明会の活動メンバーであることを認識し、吉野はデューイ講演を二回聞いたことが日記に記されている。また、デューイは中国からのアメリカへの帰途、1921年8月下旬、日本に立ち寄った際、東京で吉野に会い、英文著書『創造的知性』を吉野に進呈している。
デューイの日本招聘は、東京帝大文学部の姉崎正治、友枝高彦、桑木厳翼らが中心となって実現したが、彼ら以外に、渋沢、新渡戸、吉野との接点が重要であったことを笠松論文は明らかにしている。