後藤斉「西洋人日本語研究に関する吉野作造の論考」

20160311

キリシタン期以来の西洋人の日本語研究に関心を寄せた吉野作造
東北大学の後藤斉先生から「西洋人日本語研究に関する吉野作造の論考」(『東北大学言語学論集』第24号、2016)をお贈りいただき、さっそく拝読。まさに、これまで光をあてられなかった吉野作造の一面ーー吉野が、西洋人による日本語研究の分野の先駆者の一人であることが、資料博捜のうえ説得的に展開されている。
氏の論考は、吉野作造の小冊子『西洋人の日本語研究』(仙台第一中学校校友会「創立三十周年号特別付録、1923)、幕末のホフマン日本文典のもとになった「ドンケル・クルチウス日本文典を主題として」(中央公論1923年4月号)、キリシタン版『コリャード ざんげろく』の翻字の作業までして発表した「切支丹懺悔録」(改造1928年2〜3月号)など、『吉野作造選集』に入っておらず、従ってこれまで注目されることのなかった吉野の論考を取り上げている。
後藤斉氏は、吉野作造エスペラントの先駆者の一人であり、中国人や朝鮮人と平等な立場で話し合いたいという動機で学習を続けたこともすでに明らかにしている(『日本エスペラント運動人名事典』ひつじ書房、2913;『人物で見るエスペラント文化史』日本エスペラント協会、2015)。さらに、政治学研究や明治文化研究とも異なる吉野作造の、キリシタン期にさかのぼる言語研究への関心を明らかにしたこの論考は、新たな吉野作造像を示したものとして、高く評価されるだろう。