高橋進さん

20140227

高橋進さん(国際政治史が専門)が逝ってこの3月2日で4年となる。この24日、東京・神楽坂で、同世代の親しくしていた人の集まりがあった。9人ほどの小ぢんまりとした会。進さんは、元気であれば65歳。この4年間、さまざまなことがあった、あり過ぎた、という思いは、集った人の共通のものだったように思う。
 その死の知らせは衝撃的だった。匆々のうちにしたためた葬送の文を引用する。


高橋 進先生(UP 1004)
三月二日、高橋進先生が亡くなられた。東京大学大学院法学政治学研究科教授。享年六十一歳。
『ドイツ賠償問題の史的展開』(一九八三年)、『歴史としてのドイツ統一』(一九九九年)、『国際政治史の理論』(二〇〇八年)など、ドイツ政治史、国際政治史の分野で優れた研究を著している。また、東京大学二十一世紀COEプログラム「先進国における《政策システム》の創出」拠点リーダーとして活躍し、その成果は「政治空間の変容と政策革新」全六巻として小会から二〇〇八年に刊行されている。
氏の学問的業績の紹介は別に譲るとして、大学人としての氏を語るにあたって大学出版部である小会との密接なかかわりを落とすわけにはいかない。氏は東京大学史史料室室長として、また東京大学総合研究博物館長として、その成果の公開に努力され、小会も書籍の出版を通して協力した。例えば、一九九八年刊行の『東京大学の学徒動員・学徒出陣』は史料室が編集したものであり、近代史のなかの東京大学を語る際に不可欠の書である。本書を推進するに当たっては、平和に賭ける氏の学問的実践的使命が背景にあったと思う。また二〇〇四年の法人化という大学史の画期を経て企画された博物館編の『東京大学』の公刊にあたっては博物館長として尽力された。
旧臘、氏から電話をいただいた。以前から、吉野作造について著作をものしたいとして資料を収集されていた氏は、「もう少しで停年になり時間的余裕もできるのでそうしたら吉野についてまとめる。一緒にやりたい」という主旨であった。政治史を専門としメディアにおいても積極的な発言をしていた氏は、同郷の先達の吉野作造に対して殊の外、畏敬の念を抱いているようにみえた。その思いをあらわす機会は永遠に失われてしまった。
進さん、残念です。悔しいですよ。(T)