日産書房:小林秀雄、金田一昌三、山本健吉、三浦徳治と矢内原忠雄『内村鑑三と新渡戸稲造』(1948)

20170527記

【日産書房:小林秀雄金田一昌三、山本健吉、三浦徳治】
「戦後北海道の出版文化」展で矢内原忠雄内村鑑三新渡戸稲造』(日産書房 1948)が展示。この日産書房は、発行者の三浦徳治と札幌の金田一昌三が運営したようで、その奥付住所は港区芝田村一ノ二日産館 と 札幌市南二条西四丁目一。疎開系出版社か。
小林秀雄は戦前の三部作『文芸評論』『続』『続々』を戦後この日産書房から刊行している。そして日産書房では文芸評論家となる山本健吉が働いていた。
矢内原『内村鑑三新渡戸稲造』についての5月19日付け金田一昌三から山本健吉宛の手紙も展示。それは、時間の関係で印刷所の内校を待たずゲタ履きのままのゲラを送るので、矢内原先生へのとりなしを願う内容。札幌で印刷組版が行われていたことが分かる。
なお、金田一昌三はのち北海道立図書館長、三浦徳治は、北海道の創元社筑摩書房鎌倉文庫の責任者も務めた人物で、ブローカー的な存在らしい。

 *

20170514

積ん読であった山本健吉『日本詩人選5 大伴家持』(筑摩書房 1971)を読了。とてもいい。朝廷の藩兵である大伴一族の一員でありその長となった家持は位階制の官僚であり、一方で当時の先進的知識人であった。その狭間を生きた家持の詩心を見事に捉えた家持論。私は本書に、体制としてに律令制に抗った家持に、若き日に共産主義運動に関わった山本健吉を投影して読み込んだが、果して。