古矢旬「丸山眞男と「アメリカ問題」」(『丸山眞男記念比較思想研究センター報告』11、2016.3)

20161017

古矢旬「丸山眞男と「アメリカ問題」」(『丸山眞男記念比較思想研究センター報告』11、2016.3)を読む。これは、2015年11月27日の東京女子大学での講演録。アメリカ研究者であり、また丸山眞男超国家主義の論理と心理 他』(岩波文庫)を編集し卓抜な解説を寄せた氏のこの丸山眞男論は、特筆に値する。
古矢旬さんのこの講演録は、丸山の政治学アメリカ理解を踏まえながら、独立宣言を初めて訳し、先住民抑圧の上に成り立った米国に疑問を呈した福沢諭吉以来の(高木八尺大岡昇平を含めての)アメリカ理解とアメリカ研究を視野に入れ、現代アメリカ(だけではなく、世界)の直面する課題を析出した、学ぶところの多い論考である。
このような卓論の背景には、丸山眞男と親交のあった古矢旬さんの洞察力は勿論だが、丸山眞男の資料を整備公開する努力をする東京女子大学丸山眞男文庫関係者の地味な仕事があることを、改めて感じた次第である。