丸山真男の鍛治隆一宛て書簡:東京大学出版会前後

東大出版会の前身の一つである東大協同組合出版部(1946年秋に活動開始)には、出版企画についての顧問会があり、そのメンバーは、渡辺一夫、福武直、中野好夫丸山眞男、宮原誠一であると『東京大学出版会 50年の歩み』にある。その具体的な裏付けを、丸山眞男の嘉治隆一宛て 1947-7-15 書簡に見出すことができた。なお、この文面は、原稿用紙に記載され、東大協同組合出版部学生が嘉治隆一のもとに持参したと編集部によって補記されている。

嘉治隆一
一九四七(昭和二十二)年七月十五日
謹啓、その後御無沙汰致しました。御変りない事と存じ上げます。小生相変らず、講義に追われ、雑用にまみれ、慌だしい日を送って居ります。引籠って好きな本でも読めた反動時代がかえって懐しい様な気が致します。
偖、たまに御便りすると何かの御願で甚だ恐縮に存じますが、東大の協同組合の出版部で、世界各国の学生運動に関する手頃な概説書を出したいという企画がありまして、単に從来の様に現象的な或は公式的な扱い方ではなく、もっと学生生活との内面的関連が明かになる様なものをつくりたいと非常に意気込んでいます。そうして学生が、是非とも日本の学生運動とくに新人会前後のそれについて、嘉治先生に御願いしたいというので、御多忙中御無理とは存じますが、御面会下さって、色々御話承わらして頂ければ幸甚の至りに存じます。もしどうしても御無理の様でしたら、企画其他についてせめて御示唆なりとも御与え下さいますよう、甚だ勝手な申様で御座いますが、私よりも伏して御願申上げます。
なお協同組合は、兄(鐵雄)と放送局の同僚で親友の別枝達夫氏(先生とも二、三度御目にかかった事があるそうです)が実に熱心に学生の面倒を見て戴いて居りますので、或は兄の方から御願しようかとも存じましたが、連絡の便宜上私から御願申上げた様な次第です。どうぞ学生御面接の上、御援肋下さいます様、くれぐれもよろしく御願申上げます。〔後略〕
丸山眞男書簡集 1』より