長谷川誠一『函館英学史研究』ーー武田斐三郎、名村五八郎、堀達之助

2019/05/04

長谷川誠一『函館英学史研究』(ニューカレント インターナショナル刊 1986.11)読了。A5判上製カバー350頁。これは、銀閣寺近くの古書店 竹岡書店で購入したもの。この本は井上能孝『箱館英学事始め』(北海道新聞社 1987)と共にハコダテ英学史についての先駆的基本図書である。
特にこの長谷川本は、一次資料を探索しそれを読み込み、通説を正し謎を解いていく専門的研究であるが、推理小説でも読むような面白さがある。
箱館英学の中核となった三人の人物、①武田斐三郎(箱館の諸術調所の指導者で、五稜郭の設計建設者)、②名村五八郎(箱館の英語稽古所のリーダーで、万延遣米使節の通詞)、③堀達之助(『英和対訳袖珍辞書』の編纂者で、箱館洋学所を運営し函館文庫を創設) の事績を明らかにしただけでなく、幕末維新期のハコダテの地で交錯した多くの人物(大島高任、立広作、塩田三郎、尺振八、ジョン万次郎、新島襄など; ラナルド・マクドナルド、ペリー、ブラキストン、オールコックアーネスト・サトウイザベラ・バード、ニコライ、M・C・ハリスなど) が登場して、巻措く能わず。
本書が第一回日本英学会豊田賞を受賞したのも頷ける(残念だが、編集および校正はおおいに不充分だが)。
なお、著者の長谷川誠一の履歴が分からない。1977年から88年まで酪農学園大学に務めていたこと、2013年6月21日の逝去、享年97(ということは1917年生か)は分かったが。