田山花袋『重右衛門の最後』

田山花袋『重右衛門の最後』を読了。これは、自然主義作家花袋が生まれる画期となった作品と言われる。初版は1902年(明治35)5月、新声社のアカツキ第五篇として刊行された。新声社は新潮社の前身。
『重右衛門の最後』は連作として構想されながら続かなかったため独立作品としては結構に難がある。しかし、話者が長野県の村に行って体験する連続放火事件と、犯人とされる村人の重右衛門の生い立ち、そして重右衛門に対する村落共同体の掟の発動についての記述は、自然風景の描写と相まって、見事なものである。やはり優れた作品と言うべきだろう。
造本はカバー付きという。(本文写真は、戦前の全集版だが、タイトルが初版では「最後」、全集版では「最期」となっている)

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