カラフトの満漢日文史料 ナヨロ文書

カラフトの満漢日文史料:

中見立夫(東京外大名誉教授)の「満史満学研究劄記」(『満族史研究』18号、2019.12)を読んでいたら、北大図書館所蔵の「カラフトナヨロ惣乙名文書(ヤエンコロアイヌ文書)」が2019年度に重要文化財に指定されたことが出ていた。北大図書館のサイトの説明は次の通り。

《カラフト西岸ナヨロの惣乙名(複数村落の統括者)をつとめたアイヌの氏族長の家に保管,伝来した文書群で,清朝関係文書4通と日本側作成文書9通の計13通で構成されます。前者は18世紀後半から19世紀前半にかけての満文2通(1通は官印が押捺された公文書)と漢文2通で,清朝への進貢に関する内容をもっています。日本側作成文書は,江戸時代後期(18世紀末から19世紀中葉)のもので,最上徳内らカラフト探査に携わった人物による前記満文文書ほかを披見した旨の書付,ならびに箱館奉行所等発給の惣乙名職等の任免に関する文書の2種に大別されます。18世紀から19世紀にかけてのカラフトアイヌと中国,日本との関わりを伝える極めて稀有な文書群であり,当該期のいわゆる北方世界の歴史研究上に学術的価値が高いと評価されました。》

中見教授によれば、この史料に注目した北大言語学教授の故池上二良で、本史料の写真・史料解題は池上編『ツングース満洲諸語資料訳解』(北大図書刊行会、

2002)に「カラフトのナヨロ文書の満州文」として収録されているという。

なお、満文史料の一つは、乾隆帝時代1775年のもので、清朝勢力の沿海州やカラフトへの浸透を示すもので、そのことに日本が気付くのは19世紀に入っての間宮林蔵探検によってであったという。

参考 相原秀起『追跡 間宮林蔵探検ルート』(北大出版会、2020)