中村武羅夫の辻堂

藤沢市辻堂西海岸の勘久公園を訪れた。ここは、北海道は岩見沢の出身である編集者・作家の中村武羅夫(1887-1949)が1921年に別荘を建てその後住まいとした地。辻堂駅から南に約15分の距離。跡地は勘久公園として整備され、中村の文学碑「誰だ 花園を荒らす者は」が1968年に建てられている。建碑発起人は阿部知二大宅壮一川端康成田辺茂一船橋聖一、古屋信子など。

中村は、アポなし訪問記者として夏目漱石などに突撃インタビューし『新潮』に掲載して名を挙げ、それは『現代文士廿八人』(日高有倫堂1909/講談社文芸文庫2018)として刊行。その後、同誌の編集長として、菊池寛らに対抗し文壇に一勢力を築いた。

碑文は、1928年『新潮』掲載の評論「誰だ? 花園を荒す者は!」にならったもので、この評論はプロレタリア文学に対抗して芸術派(純文学派) の結集をはかったものと言われる。ただ編集者としての中村はプロレタリア派の作家も登用している。

中村武羅夫は1942年設立の日本文学報国会の中心となり、戦争協力者として戦後は不遇のうちにこの辻堂の自宅で逝去。墓は多磨霊園にある。なお、生誕地の岩見沢にも同文の文学碑が建てられているという。