『男はつらいよ 純情篇』と垂水五郎さん

テレビで『男はつらいよ 純情篇』を初めて見た。これは、は、1971公開のシリーズの6作目。寅さんの相手は若尾文子。寅さんが失恋する最終場面に登場するのが、若尾文子の夫役の垂水五郎であって、見ていて、あっと驚いた。というのは、わたしは学生時代に垂水家の息子さんの家庭教師を一年したからである。1972年から1973年。

 その頃はわたしも名画座を渡り歩く映画ファンであり、劇作家の三好十郎の熱烈なファンであった。当時、劇団民芸に所属していた垂水さんからは、公演のチケットをいただき、確か紀伊國屋劇場に2回ほど行った記憶がある(貧学生には、演劇のチケットを自前で買う余力はなかった)。

 ただ、垂水さんからも奥さんからも『男はつらいよ』に出たということは一言も聞かなかった。また、20歳前後のわたしも、封切りの映画を見に行く金もなかったので、当時、映画館に行って『男はつらいよ』を見ることはあり得なかった。半世紀ほど経って初めて、スクリーン上の垂水五郎さんに再会した次第である。懐かしい、以上である。

(当時、垂水五郎さん相手に、三好十郎や久保栄について語りかけてみたことがあったが、適当にあしらわれてしまった。当然だ。今なら、よく分かる。)