『鮮血遺書』『日本切支丹宗門史』: 内田魯庵と吉野作造

20140614

『鮮血遺書』『日本切支丹宗門史』: 内田魯庵吉野作造
松崎實著『校註 切支丹鮮血遺書(きりしたんちしほのかきおき)』(改造社)を古書店で入手。1926(大正15)年4月10日10版。初版が同年2月13日発行であるから、えらい売れ行きだったことが分かる。本書は、1887年(明治20)刊行のビリオン閲・加古義一編『日本聖人鮮血遺書』をもとに、その原典であるレオン・パジェス『日本切支丹宗門史』を参照して松崎が編纂し直し、考と註を加えたもの。
 当時は、内田魯庵の随筆『獏の舌』(沙翁全集刊行会、1921)中の「切支丹迫害」や、吉野作造『主張と閑談1新井白石とヨワン・シローテ』(文化生活研究会、1924)中の「切支丹の殉教者と鮮血遺書」、それに芥川龍之介キリシタン物などがあり、切支丹ブームがあった。それを背景として松崎の企画が生れたという。
 ちなみに、『鮮血遺書』の原典となったレオン・パジェス著『日本切支丹宗門史』(1869‐70)は、のちに吉田小五郎訳で岩波文庫から全3巻として刊行された(1938‐40)。これは、豊臣秀吉が亡くなった1598年から三代将軍家光の没した1651年までを扱っている。
キリシタン史についての文献はある程度集めたが、私自身のキリシタン像を結ぶには日暮れて道遠し。