尾崎士郎「天皇機関説」: 美濃部達吉

20140417

尾崎士郎天皇機関説」(1951年)を読む。国体明徴運動が憲法学者美濃部達吉へのテロにまで進んだ天皇機関説問題をどのように小説化しているのか、という関心をもって読んだ。
満州国皇帝入京の日であり美濃部の検事局出頭予定日であった1935年4月6日の描写から始まり、成蹊学園に隣接する広大な屋敷に都内から移り住んだ美濃部が自宅を訪ねてきた暴漢に銃撃され大学病院に入院した36年2月21日、その数日後、二二六事件が起る、という描写で終わる。
さすが手練れの作家、見事。地滑り的に流亡していく時代の雰囲気をよく捉えている。美濃部達吉を主人公にしたこの小説の真の主人公は「時代」である。それは奈落へと続く時代であった。