学生書房編集部編『闘うヒューマニスト:近代日本の革命的人間像』(1948年4月);桜井恒次

20130623

学生書房編集部編『闘うヒューマニスト:近代日本の革命的人間像』(1948年4月);桜井恒次

学生書房から1948年に刊行された『闘うヒューマニスト』を入手した。これは、12人の人物を取り上げて、担当執筆者に自由に書いてもらったものである。例えば、幸徳秋水については石川三四郎が、片山潜については野坂参三が、吉野作造については鈴木東民が書いていて、今日では、その執筆者自身が研究の対象となていて、貴重な本である。
『闘うヒューマニスト』の版元は学生書房である。これは、1946年2月2日に東大の大学新聞社で開かれた会合での決定により、2月11日本郷通りに店舗を開設、書籍の卸・小売を営む一方、学生読書組合を組織し、その後、出版にも進出した。川島武宜『日本社会の家族的構成』(1948)など、1950年7月に解散するまで、国立国会図書館のデータによれば33点の書籍を刊行している。
また、『闘うヒューマニスト』の奥付によれば、発行人は桜井恒次である。桜井恒次(1917-1981)は1944年刊行の『或る山村共同耕作の記録』(大日本出版)の著者略歴には《昭和十六年東京帝大文学部社会学科卒業現在財団法人大学新聞社常務理事・東京帝国大学嘱託・東京帝大都立学会専任研究員》とあるという。戦後直後1945年に丸山眞男、瓜生忠夫、内田義彦、中村哲らと青年文化会議を結成している。また『きけわだつみのこえ』(東大協同組合出版部、1949)には渡辺一夫真下信一小田切秀雄らとともに編集委員を務めている。東京大学新聞社(大学新聞社→帝国大学新聞社→東京帝国大学新聞社→東京大学新聞社と変遷)に関りつつ、戦後直後の文化活動・出版活動にかかわっていたと思われる。