追悼:南原実氏

20131203

追悼:南原実氏

11月12日逝去。享年83.膵臓がんではあったが、まだ先と思われていた、とご遺族からお聞きした。
あまり知られていないが、氏は、最初『生と死の妙薬』という邦題で刊行されたレイチェル・カーソン沈黙の春』の訳者(青樹簗一)である。
私の手元に南原実『未来を生きる君たちへ』(新思索社、2005)がある。父・繁の母校である(香川県の)三本松高校創立百周年記念講演(2000年)の「私たちの歩んだ百年」を冒頭に置いた、若い読者が日々生きて考えていくために必要な基本的なことを語ろうとした本である。
この南原実『未来を生きる君たちへ』の「おわりに」の筆者は青樹簗一であり、南原実の生を簡潔にまとめている。つまり、この「おわりに」は南原実による南原実への賛である。
かつて、南原実『聖なる森の旅 ルーマニア』(白水社1984)を図書館で開いたことがある。著者のヨーロッパ留学時代、「妖精の国ルーマニア」で体験したことをしるした本である。中身は忘れたが、その透き通るような文体に魅せられ、不思議な世界に引き込まれたことは鮮明な印象として残っている。
南原実氏とお会いしたのは二回。一度目は1989年の南原繁生誕百年記念会の時。学士会館であった。二回目は、三年ほど前に月例の南原繁研究会に氏がオブザーバー参加された際。これも学士会館。この時私は名刺を渡し、機会を得てお話を伺いたい旨を希望した。青木湖住まいで、いつでもどうぞ、と言われたが、なぜか私が遠慮してしまった。こんなに早く逝かれるとは思っていなかった。