西谷能英『出版は闘争である』(論創社)読了

2015/04/03記

未来社の社長である西谷能英さんの『出版は闘争である』(論創社)を読了。とても面白かった。出版と出版業界のこと、書籍と文字とに関してなど、いろいろと考えさせる本である。ぜひ、本に関心を寄せる人には読んでもらいたい。
実は、2004年秋、大阪キャッスルホテルで開かれた大学出版部協会秋期研修会を終えたのち、雨に濡れる大坂城を見ながら書いて公開した拙文のタイトルが「編集は闘争である」。西谷能英さんの著書の予告を見て、この業界で、近いことを考えている人はやはりいるものだと思った。
思いがけず西谷能英さんから『出版は闘争である』のご恵投を受け、すぐ読み始めた。収録された文章は、すでにブログその他で読んでいて大体はつかんでおり、集中すれば一日で読み終えられると思っていたが、おっとどっこい、大きな間違だった。
西谷さんの一文一文が読ませ、考えさせるものであり、それぞれについて、その通りと共感し、そうだったと納得し、果たしてそうなのか違和感を感じ、これは違うぞ異論あり、と思いつつ読んだ。また前著『出版文化再生』(未来社、2011)をも読み直し、メモを取っていたが、追いつかず、本に直接書き込みをして読み進めることになった。
この西谷さんの本を読むことによって、改めて、本とは何かについて気付かされた。つまり、西谷さんの同じ文章について、ブログなどで接していた時は大量の情報の中で出会う「一過的な情報」として読んでいたのに対し、命がけの飛躍を経て書籍となった本書に向かう場合は、それなりの覚悟をもって読む。そして、その文章が「思索の結晶」となっていて、読むものは「思索の結晶」を思索することが求められていることに気づいた。
つまり、書籍としての西谷『出版とは闘争である』を読むこと自体が、ブログの情報と書籍の表現とは、極端に言えば、別物であることを、強く気づかさせるものだった。西谷さんの個々の表現への、共感、納得、違和感、異論あり、については、別途、書くつもり。まずは、皆様、『出版とは闘争である』をご覧あれ!