飯田泰三『大正知識人の思想風景:「自我」と「社会」の発見とそのゆくえ』を読む

2019/04/03記

 

飯田泰三『大正知識人の思想風景:「自我」と「社会」の発見とそのゆくえ』(法政大学出版局 2017. 4)読了。本書は、著者の1973年度の博士論文「大正知識人の成立と政治思想:「文明批評家」の場合を中心に」を活字化したものであり、それに1975年に紀要に発表したものを「明治ナショナリズムの解体と「文明批評家」像:長谷川如是閑における「文明批評家」の成立」と改題した附録などを加えて構成されている。40年以上も前の論考を著者自身が一書にまとめられたことを言祝ぎたい。
取り上げられた対象は、野村隈畔、田中王堂、生田長江、土田杏村、阿部次郎、左右田喜一郎、長谷川如是閑中沢臨川、室伏高信など。わたしなどは、名前は知っているが、一部の人を除いてその単行本を読んだこともない人が並んでいる。その意味で、基礎的知識を欠いたままに本書に取り組み、半ばまでは読むのに難渋したのが率直なところである。ただ、著者の大きな意図と見取り図がだんだんと分かってくるにつれて引き込まれて読むことができた。
本書の成り立ちや凡例的な記述が末尾のあとがきにあり、また見取り図が巻末の附録にあるが、読者はまず最初にこれらに目を通した方がいいと思う。